全身に及ぶ歯周病菌の影響 病気との関係
歯がグラグラして最終的には抜けてしまう歯周病は、成人の多くが患っている炎症性の病気です。影響は口腔(こうくう)内にとどまることはなく、これまでの研究から、肝臓病や心臓病、糖尿病など全身の疾患とも密接に関係していることが分かってきました。
★歯周病って何?
歯周病とは、歯と歯茎の間に細菌の塊である歯垢(しこう)や歯石がたまり、細菌感染を引き起こし歯の周りに炎症が起こる病気です。初期は歯茎が腫れる歯肉炎に留まっていますが、放置すると歯を支える骨が破壊される歯周炎へと進行していきます。
★80%の人が歯周病
軽い症状まで含めると日本人の成人の約8割が歯周病にかかっていると言われます。歯周病が最も怖いのは自覚症状がないまま進行し、放置すると歯が抜け落ち、さらにその影響は全身に及ぶ点にあります。
★全身へ 口の中に留まらない歯周病菌
歯周病と関連があるとされる病気として知られているものに「糖尿病」があります。この病気は血糖を下げるホルモンのインスリンがうまく働かなくなったり足りなくなったりすることで発症します。
歯周病菌から出される毒素が血管内に入ると、炎症性物質がつくられインスリンができにくくなり、血糖値が上がることも分かっています。さらに、糖尿病患者は病原体などから身を守る免疫の働きが低下しており、炎症による組織の破壊が進みやすく、歯周病が重症化するリスクは1.5?3倍程度高くなります。
他にも、筋梗塞などにつながる動脈硬化、慢性腎臓病、誤嚥(ごえん)性肺炎などとの関連も指摘されています。
口の病気だと甘く見ずに、しっかり治療することが他の病気を防ぐことにつながります。
★歯周病を治療すれば、全身疾患の症状改善に
これまでの研究から、歯周病は肝臓病や心臓病、糖尿病など全身の疾患とも密接に関係していることが分かってきました。歯周病を治療すれば、こうした全身疾患の症状改善にもつながるのです。
歯周病治せば肝炎・糖尿病も改善 全身疾患と関連 解明進む
日経新聞電子版に詳しく書かれています、詳しくはコチラ
★歯みがきしてるのに、どうして歯周病に?
歯磨きが上手な方でも、歯ブラシだけで100%歯垢を取り除くのは難しく、歯ブラシとデンタルフロス両方をしっかり使えたとして、80?85%ほどと言われています。
歯の表面には、小さな窪みがあり、この窪みには歯ブラシの毛先は届きません。また、歯と歯の間は、デンタルフロスを上手に使わなければ歯垢は残ります。
歯と歯肉の境目にも、歯ブラシの毛先が届かない場所があります。歯を十分に磨けていないと歯と歯茎の間に歯垢がたまってしまう。その結果、歯と歯茎の間の溝である「歯周ポケット」が深くなって、さらに歯垢がたまり、炎症が拡大していきます。
最終的には歯を支える土台である歯槽骨が破壊され、歯が抜け落ちる事態を招きます。ひどい歯周病になると歯周病菌により炎症を起こした部分の面積を足し合わせると、「手のひらほどの大きさになる」と東京都健康長寿医療センター研究所の平野浩彦専門副部長は話します。
炎症は、傷が口の中にあるような状態です。手などカラダの一部をケガした場合は、通常手当をしますがお口の中だと、ほったらかし、傷口が開いたままになった状態で菌が血液に入り込み全身をまわるのです。考えてみるとゾっとしませんか?
また、近年普及している人工歯根(インプラント)を埋め込む治療でも「インプラント周囲炎」という症状が出ることがあります。これは歯周病と同じく歯垢や歯石などが原因で起こる細菌感染による炎症です。
「歯周病は一生つきあう病気と考えるべきだ」と専門家は口をそろえています。
★★歯のクリーニングを受けましょう
同じ個所が磨き残しになることが多いと、歯周病が発生してしまいます。(歯周ポケット内に入り込んだ細菌も、4mm以上の深さでは、歯ブラシも歯間ブラシも届かず、取り除けません。歯石も、歯ブラシだけでは取れません)
歯科医院では、自宅でのセルフケアでは取り除けなかった歯垢や歯石、バイオフィルム(細菌の塊)を歯科衛生士がケア(PMTC)を行い、口腔内の環境を整え、虫歯や歯周病を防ぐことをお手伝いしています。
※PMTCとは、Professional Mechanical Tooth Cleaningの略。専門家が高度な技術を使い、歯を掃除してキレイにするという意味です。
細菌がたくさんいるのような状態の口の中で1本、2本と治療を行っても、その原因を改善しなければ、また違う歯が悪くなってしまします。
当院の予防歯科
「予防歯科」のゴールは治療することではなく、口・歯が晩年になってもしっかり残り、美味しく食事がとれ、元気に過ごしていただくことです。そのためにもリスクを把握し、一人ひとりのリスクに応じたケアを定期的なクリーニングを行うことが大切になってきます。
トラブルが起こる前に、虫歯や歯周病の原因となる細菌をきれいにクリーニングし、食生活を気をつけ、正しい歯磨きを心がければ、いつまでも健康な歯と歯ぐきを保つことができます。